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みはしのブログ

草木染めを考える  @群馬県沼田市の京呉服みはしです
2019年05月30日 3代目ブログ 
こんにちは、京呉服みはし、店長の平原です。



さて、今回は草木染めについて、少しだけお話をさせていただきます。
草木染めという言葉、着物ファンをはじめこの業界に関わる方であれば誰もが知り、多くの方が耳にしたことがある言葉かと思います。


草木染めとは、Wikipediaによりますと、
合成染料(化学染料)を用いた染色に対して、天然染料を用いた染色を区別するために生じた呼称。
昆虫から得られるコチニールのような植物由来の染料でなくとも天然染料で染めること、または染めたものを草木染めという。タマネギや落花生の皮のような過程で生ゴミになってしまうものも染料として使用されている点で家庭的な面がある。

とあります。


日本古来の染色として有名なのは、藍、茜、紅花などがあり、化学染料と違い、大変な手間暇を要し、材料の確保も簡単ではありません。そして、同色の再現が難しく、ある程度のレシピはあれど、職人が培った長年の感がなければ到底作り込めない色があるのです。

aizome_aigame.jpg
↑藍染に用いられる藍甕。苛性ソーダやハイドロなどを用いた簡易的な技法ではなく、ふすまや日本酒など天然のものだけを用いた技法にこだわる、徳島にある有限会社本藍染矢野工房さんに見学させていただいた時の写真です。



先ほどWikipediaの説明の中に、「化学染料を用いた染色と天然染料を用いた染色を区別するために生じた呼称」とありましたが、この呼称は、草木染色家としてご活躍されていた山崎斌(やまざきあきら)氏が1930年に、東京銀座資生堂で「草木染信濃地織復興展覧会」を開催した際に、合成染料による染と区別するため、古式ゆかしい草根木皮による染めを「草木染」と命名した言葉です。(一部草木工房HPより引用)
実はこの草木染めと命名した際に商標登録をし、原則として山崎氏以外がこの言葉を使用するには使用料を収めるか、呼称を変える必要があったのです。

登録された商標は50年でその期限を迎えるため、再び登録をする必要があります。


しかしながら、ここで一つの想いが大変ドラマティックなんです。(と、個人的には感じました)

山崎斌氏の後継者である息子の山崎青樹(やまざきせいじゅ)氏は追加申請を行っておりません。
その理由は「草木染めを愛する人に自由に使用してもらいたい」という想いに忠実に、草木染めの今後の発展を願ってのことだったのでしょう。



tubokurayusuke_koubou.jpg
↑平成の草木染め職人(私が勝手に命名??)である、坪倉優介さん。100%の草木染めにこだわり、全国各地の樹木や植物を用いた染色を一人でこなしています。みはしでも、地元のリンゴの木の枝を使っていただき、リンゴ染めの着物を作っていただきました。



現在では、斌氏の孫にあたる山崎和樹(やまざきかずき)氏が工房を引継ぎ、制作や啓蒙活動をされています。

賛否両論はあるかもしれませんが、この草木染めを愛する気持ちがそう決断をさせたのでしょう。
みなさんはどう思われるでしょうか??


そしてそして、この山崎家3代が切り盛りしている工房は、現在は神奈川県に拠点を構えておりますが、1956年より長野から、我らが群馬県高崎市に移転し、長らく草木染の研究をされていました。

2代目の山崎青樹氏はその功績が認められ、1977年には群馬県指定重要無形文化財保持者に指定され、1978年には群馬県文化功労章を受章、その後も、黄綬褒章や高崎市文化功労賞、旭日双光章を受賞し、大変な功績をあげられています。


群馬県で店を構える着物屋として、そのような偉大な方が群馬にいらっしゃったということを知った時は、妙に嬉しく思い、いつか工房を訪れてお話を聞いてみたいなと思いました。


草木染めは、人類が古より知恵を振り絞り、多くの失敗を繰り返し、数々の時代を彩ってきた、素晴らしい技術です。
その言葉の奥に、1000年を超えるロマンが詰まっており、世界を見渡せばもっと厚みのある歴史の数々があるのです。

kihatijou_kizimihon.JPG
↑東京の八丈島に伝わる、通称「黄八丈」の生地見本です。八丈島に自生する植物を用いた100%草木染めの織物であり、生産量が非常に少ないため、レアものとして着物通に知られます。



古来から伝わる草木染めに拘る、染司(そめのつかさ)よしおかの吉岡幸雄先生にお話をお伺いすることがあり、こんなことを仰っていました。

「1000年前がピーク。手間暇をかけなくなったから衰えてしまった」


確かに化学染料が発明されたことで、短時間で様々な表現ができるようになりました。これは科学の進化によって得られた「大いなる財産」であることは誰もが疑うことは無いでしょう。
しかし、もう一方の視点から見てみると、手間暇を省き簡略化することで、現在では幻となり失ってしまったものも存在するのも、また事実であります。


私達は、今後迎えるであろう「人類の進化」をどのような視点で捉えるのか、もしかしたら、これは大きな課題となるかもしれませんね。


草木染めと向き合うことで、色々なことを感じずにはいられないのです。




【終わりに】

みなさん旅行は好きですか?私も最近になって「旅行って良いな」「いろんなところに行ってみたいな」と思うようになりました。
子ども、学生の頃は、ほんとにテレビゲームばっかりやっていて、世の中に興味が薄かったせいか、旅行なんて行きたいと思ったことは殆どない、侘しい少年、青年でございました(笑)


そんな侘しい平原少年ですが、仕事をするようになり、着物の産地を中心に色々なところに行き、その土地のものを味わい、見たり、聞いたりと、勉強、研修ではあるのですが、そういうのが「面白いな」と感じました。
今思えば、自分が着物の文化性について興味を持ち、歴史や文化を学ぶという昔では考えられないような境遇に身をおいているのも、こういった各産地での研修から大変な影響を受けているのだなぁとしみじみ思います。


そういう意味では、京都というまちも、仕事柄訪れる機会も多く、折角ならお客様や知人をしっかり案内できるようになりたいと思うようになり、京都の有名な寺社仏閣や、自信を持って紹介できるような食事処を自分なりに勉強するようになったのも、同じような感覚でしょうか。
目指すは京都検定1級!?是非一緒に京都巡りしませんか??

タグ: 着物  草木染め  染司よしおか  坪倉優介  藍染  矢野工房 

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